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AIショーホストはライブコマースの売上を生むのか

「AIショーホストはライブコマースの売上を生むのか」— AIショーホストが進行するライブコマース配信の4シーン(Shoplive)

執筆

Roaane

編集

Lucid

💡 この記事の要点

  • AIがつくった動画をくり返し流すのはコンテンツの自動化です。顧客の質問によって内容が変わってこそAIライブコマースです。

  • ライブの核心は動画が流れているかではなく、実際に相互作用が起きているかです。人のように見えるだけでは売れません。

  • 本当のAIライブコマースは、AIが話し始めた瞬間ではなくAIが顧客の言葉を聞き始めた瞬間に始まります。

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AIショーホストとは、AIの音声・映像・デジタルヒューマンなどの技術で商品を紹介し、販売まで行う新しいショッピングコンテンツです。実際の人が進行する従来のライブコマースとは違い、コンテンツを事前に制作することも、AIがリアルタイムで配信を進行することもできます。ショーホストの起用や撮影にかかる費用と時間を抑えられ、時間帯を問わず配信を回し続けられるのが特徴です。

韓国では、ロッテホームショッピング(韓国の大手テレビ通販事業者)のバーチャルショーホスト「ルーシー」が2024年2月の配信開始から2026年3月までに累計受注額約500億ウォン(約55億円)、同時間帯比で約50%高い受注実績を記録したと報じられています。中国では、JD.comのAIデジタルヒューマンライブ「JoyStreamer」を7万社ほどの出品者が利用しており、2026年第1四半期のデジタルヒューマンライブ規模は前年比10倍に伸びました。

このように、AIショーホストで商品説明の動画をつくり、それを24時間くり返し流す形が増えています。
では、AIがつくった動画をくり返し流すことをライブコマースと呼べるのでしょうか。そして、AIショーホストは実際に売上に貢献しているのでしょうか。
現場で多くの顧客と向き合うShopliveのキム・ソンジンCBOに聞きました。

Q. AIショーホストを、いまどう見ていますか?

  1. まず、「AIショーホスト」と「AIライブコマース」は分けて見るべきだと考えています。
    いま市場でAIショーホストと呼ばれているサービスを見ると、5〜10分ほどの商品紹介動画をAIでつくり、それをくり返し流す方式です。スタジオの費用やショーホストの起用・撮影にかかるコストを抑えられ、人が配信しにくい時間帯にも配信を回せる。これは明らかな利点です。ただ、この形を「ライブ」と呼んだ瞬間に、結局ライブコマースの本質とは何かという問いに行き着きます。

Q. ライブコマースの本質は何だとお考えですか?

  1. 顧客とブランドがリアルタイムでやり取りしながら、購入に必要な情報を深く届けることだと考えています。

    「これ、実物の色はどんな感じですか?」「身長160cmですが、丈はどのくらいになりますか?」「いま品切れですが、再入荷しますか?」

    ライブ配信では、視聴者がこうして自分から質問しますよね。ショーホストがその場で答えるたびに、顧客の商品への理解が深まっていきます。
    私はこの過程が大事だと思っています。顧客が購入をためらう理由は、たいてい商品を十分に知らないからなんです。ところが質問と回答が行き交ううちに、気になっていた点、つまり購入をためらわせていた情報の空白がひとつずつ埋まっていきます。
    実際、海外の論文でも同じような結果が出ています。視聴者とショーホストの相互作用、そして視聴者どうしの相互作用がいずれも購買意図を高め、その過程で社会的存在感と信頼が重要な役割を果たすと分析されました。結局ライブコマースの核心は、動画が流れているかではなく、その中で実際に相互作用が起きているかです。

Q. では、AIショーホストでは商品が売れないということですか?

  1. そう言い切るつもりはありません。最近は、バーチャルショーホストが購買意図によい影響を与えうるという研究結果もあります。2023年にJournal of Retailing and Consumer Servicesに掲載された研究でも、バーチャルショーホストの好感度と反応性が社会的存在感を高め、それが購買意図につながりうるという結果が示されました。

    ただ、ここでひとつ注意すべき点があります。AIショーホストを使った配信で出た売上すべてを、そのままAIショーホストの成果と解釈してはいけない、ということです。

    ライブコマースの売上は、そもそも商品力、価格、割引、ブランド認知、流入トラフィックなど、さまざまな要素が一緒に生み出すものです。AIショーホストを使わなくても、同じ商品・価格・特典でイベントをしていたら出ていた売上かもしれない、ということです。
    AIショーホストを使っても期待どおりの売上に届かなかった例も少なくありません。同じ商品・同じ条件なら、人が進行した配信のほうがAIショーホストの配信より高い売上を記録する事例が、いまのところまだ多い状況です。ところが業界では、配信で出た売上すべてをAIショーホストの成果のように見せたり、AI導入の効果を大きく語ったりする例をしばしば見かけます。

    だから大事なのは「AIショーホストを使ったらいくら売れた」ではなく、「AIショーホストを使わなかった場合と比べて、いくら売上が増えたか」です。

    AIショーホストの可能性を否定する必要はありません。ただ、AIが生んだ本当の付加価値をどう測るかが、これからより重要になります。

Q. AIショーホストはどう活用するのがよいでしょうか?

  1. 最近の業界では、AIショーホストをAIライブと混ぜて使っているように見えます。AIが人のように動いて話せば、見た目にはライブらしくなります。でも、顧客が質問しても答えられないなら、その顧客は商品を信頼できるでしょうか。質問と関係なく同じ動画がくり返されるだけなら、はたして顧客のエンゲージメントは上がるでしょうか。
    私はこれをライブの形をしたVODと呼びたいと思います。動画が自動でつくられることと、顧客とリアルタイムでやり取りすることは、まったく別の話ですから。

    ですから、これからのAIライブでいちばん重要な技術は、AIがどれだけ自然に話すかではなく、AIが顧客の言葉をどれだけ正確に聞き取れるかになります。人のショーホストも同じです。30分ひとりで話し続けるより、顧客の質問を聞いて正確に答えるほうがずっと大事ですよね。AIも変わりません。質問が来たら商品DBを探し、在庫を確認し、レビューを調べ、その顧客の購入履歴を参照し、いまライブチャットで他の顧客が何を聞いているかまで読んで答える。その瞬間からAIは単なるAIショーホストではありません。AIショッピングアドバイザーに近づきます。

Q. AIライブで売上をつくるには、何が変わるべきですか?

  1. 大きく3つだと考えています。

    1つめ、コンテンツではなく会話になること。5〜10分の動画を24時間くり返すのはコンテンツの自動化です。本当のAIライブなら、顧客の質問によって内容が変わるはずです。同じ商品でも聞く人によって説明を変え、必要な情報を足して見せ、より合う商品を代わりに薦められないといけません。
    2つめ、商品情報をリアルタイムで理解すること。事前に学習したスクリプトを読み上げる方式には限界があります。価格も在庫もプロモーションもオプションも変わりますよね。顧客が聞く内容も変わり続けます。AIが実際のコマースデータをリアルタイムで読んでこそ、この変化に追いつき、売上に貢献できます。
    3つめ、配信が終わったあとまでつながることこれがとても重要です。ライブが終わったからといって、顧客との関係が終わるわけではありません。どの商品を見て、何を聞いて、何を買い、どの商品には関心を持ちながら買わなかったのか。このファーストパーティデータをCRMにつなげば、配信後も顧客ごとに違う提案を届けられます。

Q. これからAIライブは人に取って代わるのでしょうか?

  1. まず、「人をAIに置き換える」という枠組み自体が、少しもったいないと感じます。AIの最大の強みは、人が1日ではできないことをやれる点です。人のショーホストひとりが、同時に数千人へそれぞれ違う答えを返すことはできません。AIならできます。ある顧客にはサイズを説明し、別の顧客には商品を比較し、また別の顧客にはレビューを探し、ある顧客には「いまはこの商品より別のもののほうが合います」と伝えることもできます。

    AIの競争力は人になることではなく、人より多くの顧客に、より多くの情報を届けることです。
    ですからAIライブは、ひとつのAIではなく複数の役割がかみ合ったシステムへ進むと見ています。商品を説明するAI Hostがいて、顧客の質問と反応をリアルタイムで読むAI Listenerがいる。商品・レビュー・価格・在庫を根拠に答えるAI Product Expert、その顧客に合う商品を薦めるAI Sales Agentも要ります。さらに行動をデータとして蓄えるAI CRM、配信をショート動画ハイライトクリップにつくり直すAI Content Engine、配信後も購入を助けるAI Commerce Agentまで加わります。

    結局AIライブは、AIが単に配信をすることを超えて、AIがコマース全体を理解することへ 広がっていくはずです。

Q. AIショーホストの導入を考えている企業に一言お願いします。

  1. まず、次の問いを先に考えてみてほしいです。
    1)私たちが使おうとしているAIは、顧客の言葉を聞き、理解しているか。
    2)顧客の質問にリアルタイムで答えられるか。
    3)商品に残った不確かさを減らせているか。
    4)顧客の購入判断を以前より楽にできているか。
    5)この売上は、AIライブがなくても出ていた売上ではないか。

    AIショーホストの時代はすでに始まっています。ただ、AIが人のように話すだけでは足りません。ライブコマースの本質は人と人の相互作用から始まり、AIの時代でもそこは大きく変わらないはずです。変わるのは、その相互作用を通じて、AIがどれだけ深く、速く、一人ひとりに合わせて信頼をつくれるかです。

編集部まとめ — 2つの違いを表にすると、次のようになります。

区分

AIショーホスト

AIライブコマース

AIがすること

商品紹介動画の生成

顧客の質問の理解+回答の生成

内容が変わる基準

変わらない(同じ動画のくり返し)

顧客が何を聞くか

顧客の質問への対応

不可

リアルタイム応答

参照するデータ

事前に入力したスクリプト

商品DB・在庫・価格・レビュー・購入履歴

配信のあと

終了

行動データがCRMに蓄積

本質

コンテンツの自動化

会話

「AIが人のように配信することではなく、顧客一人ひとりに違うショッピング体験を届けること。本当のAIライブコマースの始まりは、AIが話し始めた瞬間ではなく、AIが顧客の言葉を聞き始めた瞬間だと思います。」
- Shopliveキム・ソンジンCBO -

よくある質問

AIショーホストとAIライブコマースは何が違いますか?

AIショーホストは多くの場合、5〜10分の商品紹介動画をAIがつくり、それをくり返し流す方式です。顧客が何を聞いても内容は変わりません。AIライブコマースは顧客の質問を理解し、商品DB・在庫・価格・レビューを根拠に答えるので内容が変わります。前者はコンテンツの自動化、後者は会話です。

AIショーホストを使うと売上は上がりますか?

研究結果は条件つきで肯定的です。2023年にJournal of Retailing and Consumer Servicesへ掲載された研究(消費者378人)では、バーチャルショーホストの好感度と反応性が購買意図に直接影響しましたが、生き生きとした印象(animacy)には直接効果がありませんでした。人のように見えるだけでは足りず、質問に反応するかどうかが分かれ目です。

自社の商品カテゴリーにAIライブは合いますか?

2025年の研究によると、家電やオフィス用品のようにスペックを比べて買う実用財では商品中心の相互作用が購入につながり、ファッションやビューティーのように好みで買う快楽財では社会的な相互作用が購入につながりました。同じAIを使っても、カテゴリーによって会話の設計を変える必要があります。

AIライブの成果はどう測ればよいですか?

配信中の売上だけを見ると実際の貢献を見落とします。ライブを見て数日後に買う顧客もいますし、配信中の売上にはもともと出ていた売上も混ざっています。AIライブがなければ発生しなかった追加の購入がどれだけあったか、つまりインクリメンタル・インパクトを見る必要があります。

AIは人のショーホストに取って代わりますか?

置き換えが本質ではありません。人のショーホストひとりが同時に数千人へ違う答えを返すことはできませんが、AIにはできます。AIの競争力は人になることではなく、人より多くの顧客により多くの情報を届けることにあります。

参考資料

  1. “How do virtual streamers affect purchase intention in the live streaming context? A presence perspective”, Journal of Retailing and Consumer Services, 2023(消費者378人)

  2. “Impacts of different interactive elements on consumers’ purchase intention in live streaming e-commerce”, PLOS One, 2024(消費者326人)

  3. “Impact of AI-generated virtual streamer interaction on consumer purchase intention: A focus on social presence and perceived value”, Journal of Retailing and Consumer Services, vol. 85, 2025

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